2013 8月 2| 夏目書房ブログ 古書古本美術品 販売 買取 神保町 ボヘミアンズ・ギルド

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素朴表現を愛でる~『つきしま かるかや』展

日本民藝館 つきしま かるかや チラシ

こんにちは。日本民藝館で開催中の展覧会『つきしま かるかや―素朴表現の絵巻と説話画』(~8/18)に行って来ました。


ここでいう「素朴絵」とは、技術を追求したものではなく、説明や記録を目的とし無作為に描かれたものを指します。描き手の自由さに注目してください。


つきしま(築島物語絵巻)

●「つきしま」(築島物語絵巻) 室町時代 図1
波が荒くなかなか進まない人口島(築島)建造のために、30人もの人柱を立てようとしおこる悲劇を描いた絵巻
右の家らしきもの、どうですか。あと一本線をひけばそれなりに見えたはずが、エッシャー入ってます。念のため家らしきもののすぐ左にある二つの太い筆線は、「山」を表現していますのでお間違いなく。


つきしま(築島物語絵巻)

●「つきしま」(築島物語絵巻) 室町時代 図2
人柱として囚われた女性たち。虫かごにいるようです。悲惨な場面なのですが笑っちゃいます。役人の槍の角度もお揃いです。


浦島絵巻(甲本) 室町時代

●「浦島絵巻」(甲本) 室町時代
浦島といえば玉手箱を開ける有名なシーンですが、まさかの鉄砲水のような煙。



香取明神祭礼絵巻

●「香取明神祭礼絵巻」 室町時代
素朴画に共通しているのは建物の足の土台がしっかり描いてあるとのこと。今にもテケテケ歩き出しそうです。


伝統大法師位僧明

●「伝統大法師位僧明」 鎌倉時代
これすごくかっこよくないですか。字と絵が渾然一体となってます。呪文でしょうか。


十王図屏風

●「十王図屏風」一部 江戸時代
しゃれこうべ笑ってます。下の屍をむさぼるものは一体・・・?
凸凹大学校における、ずうとるび江藤の絵に酷似しています。


絵入本 かるかや

●「絵入本 かるかや」 室町時代 図1
父親を知らず捜し求める息子と、息子と知りながら他人を装う僧侶である父親。二人の深い結びつきと因縁を描いた絵入本。
お花見でしょうか。人物の大小は地位?年齢?桜の枝なめの俯瞰に見えますがどうでしょう。


絵入本 かるかや

●「絵入本 かるかや」 室町時代 図2
いまわの際である悲しい場面のはずが、筋斗雲に乗った天女がふざけているようです。

「かるかや」は日本美術研究の大家、辻惟雄先生と山下裕二先生が「心の国宝」とまで評価している作品です。

「下手」「雑」などの言葉でかたづけてしまうのは簡単ですが、ひとつひとつユーモラスで人間味にあふれ、思わず笑ってしまう、豊かな魅力をたたえています。

この日は『日本の素朴画』著者の矢島新先生の講演があり、たくさんの面白い作品写真と興味深いお話を聞くことができました。
この分野は技術の巧みな有名作品群に比べ、まだまだ研究・調査が進んでおらず、わからないことがたくさんあるそうです。私も研究したい!


もっと素朴絵について知りたい!という方は以下の資料をおすすめします。

つきしま かるかや 図録

●「つきしま かるかや」展図録(日本民藝館のみの販売)
「つきしま」「かるかや」のすべてが記録された貴重な一冊。

矢島新著 日本の素朴絵A

●『日本の素朴絵』 矢島新著
入門編として一番手に取りやすく内容も平易な一冊です。表紙は「つきしま」で裏表紙が「かるかや」。

素朴美の系譜

●「素朴美の系譜江戸から大正・昭和へ」
上記の矢島新先生が渋谷区立松涛美術館の学芸員のころのお仕事です。

日本美術が笑う 2007

●「日本美術が笑う 縄文から20世紀初頭まで」

芸術新潮 2011.9 ニッポンの「かわいい」

●芸術新潮 2011.9 ニッポンの「かわいい」 はにわからハローキティまで
またまた矢島先生が女子大生と「かわいい」について考察されています。

以上ですが、いかがでしたでしょうか?
少しは興味を持っていただけるとうれしいです。


素朴画についての書籍はまだまだ少なく、あまり手に入れることができません。
もし手放しても良いというお客様がいたら是非お売りください。

よろしくお願いいたします。