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荒川修作 New York 邂逅

荒川修作がこの世を去ってからもうすぐ4年が経ちます。ボヘミアンズ・ギルドにある荒川関連の作品と共にご紹介します。

荒川修作

彼の細かな経歴は広く知られているので割愛しますが、彼の人生の中でも特筆すべきは多くの芸術家達と出会ったニューヨーク時代のエピソードではないでしょうか。

ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ
1960年、荒川は吉村益信、篠原有司男、赤瀬川原平などとネオダダイズム・オルガナイザーズ(ネオダダ)を結成します。しかし、最初の個展「もうひとつの墓場」を単独で開いたことが、他のメンバーから反感を買いグループから除名されてしまいます。ネオダダ脱退後、路頭に迷う荒川に美術記者の海道日出男は「早く日本から出ていけ、お前はこんなところにいないほうがいい」と助言します。当時、渡米は容易なことではなかったのですが、以前から目をかけられていた瀧口修造の支えで荒川はニューヨークへ行くことになります。

マルセル・デュシャン
渡米後、彼を待っていたのは美術家マルセル・デュシャンでした。デュシャンは瀧口からの紹介で以前から荒川のことを知っており、荒川は変人だという人物像をすでに持っていました。NY到着後すぐに連絡を取りあった二人は安いイタリア料理店に入ります。そこで、デュシャンはソースなしのパスタを頼みます。真意はこれからの貧乏生活に備えろということでした。しかし、それから二週間、荒川はあらゆる面でデュシャンの援助を受けます。芸術家としてのデュシャンの言葉は必ず「芸術だけはするな」という文句で始まったそうです。

次に荒川が出会ったのはその頃前衛芸術家としてNYで活動していたオノ・ヨーコでした。彼女は荒川に自分のスタジオを貸し与えます。そこで荒川はデュシャンが連れてきた様々な芸術家に出会うことになります。アンディ・ウォーホル、ジョン・ケージ、ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグなどの錚々たる顔ぶれでした。ウォーホルは毎週のように彼を食事に誘い、ジョン・ケージとは一緒にキノコ狩りにいくほどの仲でした。ケージはきのこの群生地で「最近、この場所から変なさざ波のような音が聞こえる」と言いました。「いや、このヴァイブレーションは俺の一番好きなものだ」と答える荒川にケージは驚嘆したそうです。

その後、荒川はドイツの画商アルフレッド・シュメラーに出会ったことで、作品も売れるようになっていき、ドイツで大きな展覧会も開かれほどになります。ある日、荒川はシュメイラーに「ドイツで一番有名なやつがお前の作品が欲しいと言ってる」と頼まれ作品を作ります。ドイツで一番有名なやつとは現代美術家ヨーゼフ・ボイスです。
また岡本太郎がNYの部屋に訪ねてきたこともありました。岡本太郎は洗面所に溜まった洗濯物をみて「これ君の作品か?」と聞いたそうです。この二人はその後も親密な関係を築くことになります。

マドリン・ギンズ
パートナーのマドリン・ギンズに出会ったのも渡米後すぐでした。学生ビザのために入ったアートスクールで二人は出会いました。その当時絵を描いていたマドリンに荒川は「お前全然才能がないから、止めろ」と言い放ち、マドリンは本当に絵を描くのをやめてしまいます。しかしその後、共同で「意味のメカニズム」などの作品を制作し、ともに活動していくようになります。その後もマン・レイやスーザン・ソンタグなど多くの芸術家との出会いとともに荒川の活動も激しくなっていきます。

荒川修作のニューヨークでのエピソードには、次々と著名な芸術家の名前が登場します。しかし、そんな出会いは、その中でもひときわ際立つ荒川自身の強烈な個性が惹きつけたものです。生前「僕は死なないことに決めた」と言い続けた芸術家荒川修作の作品と作品集をご紹介します。

荒川修作版画額「Evening on Which」
荒川修作版画額「Evening on Which」
Syusaku Arakawa
1974年/リトグラフ シルクスクリーン エンボス 限100 サイン 額少傷み 「Arakawa Print Works 1965-1979(ギャラリー高木)」P.38掲載 79×157.5 額面84×165

荒川修作版画額「The Signified or If No.4」
荒川修作版画額「The Signified or If No.4」
Syusaku Arakawa
1975-6年/エッチング アクアチント 手彩色 A.P.版限15 サイン 60×89.5 額83×111

荒川修作全版画集 Arakawa: Print Works 1965-1983
荒川修作全版画集 Arakawa: Print Works 1965-1983
1993年/北九州市立美術館

意味のメカニズム 進行中の著作(1963-1971,1978) 荒川修作の方法に拠って
意味のメカニズム 進行中の著作 荒川修作の方法に拠って
荒川修作/マドリン・・ギンズ 瀧口修造序文
1979年/ギャラリー高木 カバー

荒川修作の二つの版画額と作品集をご紹介しましたが、他にも荒川関連の書籍がございますので、ぜひボヘミアンズ・ギルドにお越しください。もちろんホームページからもご確認できます。

また、夏目書房では、様々なジャンルの本を買取しています。お売りいただける本などございましたら、是非ご連絡ください。

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