広島で『極限芸術〜死刑囚の表現〜』を観てきました。美術館紀行その1| 夏目書房ブログ 古書古本美術品 販売 買取 神保町 ボヘミアンズ・ギルド

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広島で『極限芸術〜死刑囚の表現〜』を観てきました。美術館紀行その1

広島県 鞆の津ミュージアム

広島県のの津ミュージアムにて、死刑囚による絵画展『極限芸術〜死刑囚の表現〜』(-7/21まで)が開催されています。


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出品人数は35人で作品総数は300点あまり。


事前の予習なしに来てしまったのですが
作者は「和歌山毒入りカレー事件」の林真須美さん以外はほとんどが知らない名前ばかり。

キャプションにはタイトルと作家名、死刑確定日、執行日が掲示されており
どうして死刑となったのか、どういうテーマで描いたのかなどの説明は一切ありません。

作品そのものをみて欲しいという美術館側の配慮だと思いますが、それでも「極限芸術」と称された作品群の背後に濃密なストーリーを想像せざるを得ません。

自分は無実と主張するもの、教訓や後悔の念を描いたもの、食事や獄中生活を描くもの、美しいもの(花、、女性像、動物など)を描くもの、囚人ギャグ漫画など、さまざまな表現がなされています。

中でも林真須美さんの作品は哲学的・抽象的であり、強く印象に残りました。

他には、ヌードモデルとあらゆる反権力的なスローガンを同居させるという作風の「大分保険金替え玉殺人」の原正志さん。ポップ・アートです。
刺青の画風で描く、「家族4人がすべて死刑確定、元彫師・元相撲取り」であった北村孝紘さんなど。「愛犬家連続殺人事件」の風間博子さんも独特の抒情をたたえた画風でした。

技術的に優れたものものから、まったくの素人然としたものまでありましたが、全部に共通していることは限られた素材を使って隅から隅まで丁寧に描き込まれていることです。
たとえ技術はなくとも最後まで丁寧に仕上げてられているものは、独特の迫力があります。
紙の大きさにも制限があるようで大きな作品にはすべて折り目や糊でつないだ跡があります。
いつも美術館で観ている絵画とは違い、とてもリアルで身近な表現です。

図録がないのは本当に残念ですが、この展覧会の会期は好評につき1か月の延長が決定しています。是非足を延ばして実際に目にしていただきたいです 。



美術館のある鞆の浦(とものうら)は、瀬戸内海特有ののんびりした風情の本当に良いところでした。

広島から高速バスで1時間で福山、さらに鞆鉄バスで30分の場所が鞆の津です。バスからみえる景色は川から海へと続く水際を走るのでとても気持ちがいいです。
中世から瀬戸内航路の重要拠点だった鞆港ですが、いまはその役目を終え静かな余生を送っているような雰囲気です。
江戸時代から残る古い街並みはとても美しく、なんと宮崎駿監督が映画の構想を練った場所でもあるそうです。

鞆バス

海沿いの街道を疾走する「鞆鉄バス」。

鞆の津の江戸時代をかんじさせる裏通り

不思議な曲線の屋根部分。

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この船着き場の近くのカフェには井伏鱒二先生の自筆草稿が展示してありました!

高台より鞆の浦風景

大林信彦監督でおなじみの尾道も福山から電車でたった20分。
山あり海あり文化もある街、鞆の浦。派手な観光スポットはありませんが、本当によいところです。

機会がありましたら是非訪れてみて下さい。

もしお手元にご不要の死刑囚の絵がありましたら是非お売りください。本当にきたらビックリしますけど。

是非その日まで宜しくお願いいたします。